屋根の葺き替えに使える補助金・助成金について徹底解説

屋根の葺き替えに使える補助金・助成金について徹底解説

屋根の葺き替えには既存の屋根材の撤去や防水紙・野地板の補修、新しい屋根材の設置など大がかりな作業を伴うため、まとまった費用がかかります。そのような場合は、自治体で導入している補助金や助成金を利用し、コストの節約を図りましょう。

今回は、屋根の葺き替えに使える補助金や助成金の一覧、お金を受け取るまでの基本的な流れ、申請時の注意点について解説します。

屋根の葺き替えに使える補助金・助成金一覧

屋根のイメージ

屋根の葺き替えに使える補助金・助成金には以下のようなものがあります。

  • 長期優良住宅化リフォーム推進事業
  • 耐震性能改善を目的とした補助金制度
  • 省エネを目的とした補助金制度
  • 耐風改修を目的とした補助金制度

それぞれの補助金・助成金制度について詳しく解説します。

長期優良住宅化リフォーム推進事業

長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、既存住宅の性能を向上したり、子育てしやすい環境を整備するために創設された補助金制度です。以下の条件をすべて満たし、所定の申請手続きを行えば、屋根の葺き替え工事にかかった費用の一部を補助してもらえます(※1)(※2)。

  • 1階の床面積が40㎡以上、かつ延べ面積が55㎡以上であること
  • リフォームの内容が住宅の性能基準に適合させるための工事であること
  • 施工前にインスペクション(建物状況調査)を実施し、維持保全計画やリフォーム履歴を作成する
  • リフォーム後、その建物が構造躯体等の劣化対策、耐震性(新耐震基準適合等)、省エネルギー対策の基準を満たすこと

なお、補助金額は評価基準型か、認定長期優良住宅型かによって差があります。

前者は一定の耐震性・耐久性・省エネ性を確保するためのリフォームを対象としたものです。1住戸につき80万円(状況によっては50万円)を上限として補助されます。

一方、認定長期優良住宅型は評価基準型よりもさらに高い耐震性や耐久性、省エネ性を確保するためのフルリフォームを対象としたもので、1住戸につき160万円を上限として補助されます。

どちらも対象期間内であれば随時交付申請を受け付けていますが、予算が上限に達した場合は交付申請が締め切られてしまうので注意が必要です。

※1 国立研究開発法人 建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業 事業概要」
※2 国立研究開発法人 建築研究所「長期優良住宅化リフォーム推進事業 補助を受けるための要件」

耐震性能改善を目的とした補助金制度

建物の耐震性向上を目的としたリフォームを行った場合、その施工費の一部を補助する制度です。屋根の場合、土葺きの重い屋根を軽い金属屋根やスレート屋根に葺き替えるなどの工事が補助対象となります。

耐震性能改善を目的とした補助金・助成金制度は自治体が独自に整備するものなので、制度の有無や要件、内容は自治体ごとに異なります。

例えば千葉市の場合、以下すべての要件を満たした場合、工事費の4/5(上限100万円、二段階耐震改修工事の場合は段階ごとに上限50万円)を補助してもらえる補助金制度を導入しています(※)。(令和6年度は受付終了)

  • 精密診断の結果が上部構造評点1.0未満(二段階耐震改修工事の場合は0.7未満)であること
  • 千葉市民が自ら所有し、居住している住宅であること
  • 平成12年5月31日(二段階耐震改修工事の場合は昭和56年5月31日)以前の耐震基準によって設計・建設された木造住宅であること
  • 在来軸組工法を採用した2階建て以下の一戸建てであること
  • 市税を滞納していないこと

また、耐震改修工事を依頼する施工業者は次のうちいずれかに該当する必要があります。

  • 千葉市内に本店、支店、営業所等を開設している事業者
  • 補助対象住宅の建設工事を請け負い、新築または増築した事業者

補助金・助成金制度の内容は市町村役所のホームページなどに掲載されているので、要綱をよく確認し、申請手続きを行いましょう。

千葉市「令和6年度千葉市木造住宅耐震改修補助制度のご案内」p6~7

省エネを目的とした補助金制度

建物の省エネ性向上を目的としたリフォームを行った場合、その施工費の一部を補助する制度です。屋根の場合、葺き替え時に一定の基準を満たした断熱材を入れる工事が補助対象となります。

例えば国土交通省や経済産業省、環境省によって創設された住宅省エネキャンペーン内の子育てエコホーム支援事業では、省エネリフォームの施工費用の一部の補助を実施しています。

補助対象となるのは以下2点を満たす世帯です(※)。

  • エコホーム支援事業者に依頼してリフォーム工事を行うこと
  • リフォームする住宅の所有者であること

補助額は、子育て・若者夫婦世帯であれば1住戸につき30万円まで、その他の世帯は20万円までとなります。なお、省エネを目的とした補助金制度は自治体が独自に行っているところもあります。

国土交通省「子育てエコホーム支援事業 事業概要」

耐風改修を目的とした補助金制度

耐風改修とは、強風災害への抵抗力を高めることを目的としたリフォーム工事の費用の一部を補助する制度のことです。一般的な瓦屋根は風に弱く、台風や暴風の影響を受けると屋根材が飛ばされる可能性が高いとされています。

瓦屋根を防災瓦に葺き替えたり、スレート屋根や金属屋根等に改修したりする工事を行えば、風に強い建物になります。

耐風改修を目的とした補助金制度は各自治体が独自に行っており、一定の要件を満たすことで補助を受けることが可能です。

一例を挙げると、千葉市では令和3年12月31日以前の基準で建設された粘土瓦葺きまたはプレスセメント瓦葺きの屋根を持つ住宅の屋根改修を行う市民に対し、工事費の一部を補助する制度を導入しています(※)。(令和6年度の受付は終了)

補助額は工事費または屋根面積×2万4,000円のいずれか低い額の23%(上限55万2,000円)で、以下の要件すべてに該当していることが前提となります。

  • 台風診断の結果、告示基準に適合していないと判定された住宅であること
  • 申請者自らが所有し、居住していること
  • 市税の滞納がないこと
  • 国や地方公共団体による同様の補助を受けていないこと

また、施工業者は千葉市内に本店、支店、営業所等を開設している業者か、あるいは瓦屋根診断技師、かわらぶき技能士、瓦屋根工事技師が在籍している建設業許可業者のいずれかである必要があります。

千葉市「令和6年度 瓦屋根耐風診断費・耐風改修費 補助事業のご案内」

補助金・助成金を受け取るまでの一般的な流れ

屋根をチェックする工事業者

補助金や助成金を受け取るまでの基本的な流れは以下の通りです。

リフォーム業者を選定する

屋根の葺き替え工事を依頼する業者を選定します。自治体によっては施工業者に一定の条件を設けているので、事前に補助金・助成金制度の要綱を確認しましょう。

業者を選定したら、葺き替え工事の見積もりを依頼します。

必要書類を準備・提出する

補助金申請に必要な書類を準備し、指定の機関宛てに提出します。必要書類は制度によって異なりますが、おおむね以下のようなものが要求されます。

  • 補助金交付申請書
  • 建築台帳記載事項証明書等
  • 耐風診断報告書
  • 現地調査の写真
  • 改修計画書
  • 工事費の見積書
  • 住宅の登記事項証明書
  • 住民票

上記の他にも特定の書類の提出を求められる場合があるので、制度の要綱を確認すると共に、分からない点があれば担当窓口に問い合わせましょう。

工事前調査の実施

必要書類を提出して申請すると、制度の担当機関が工事前調査を開始します。

提出された書類の審査が主ですが、場合によっては現地での調査を行うこともあります。

交付決定通知・本契約の締結

調査の結果、補助金の交付が決定したら自宅宛に交付決定通知書が送付されてきます。

通知書を受け取ったら、施工業者と本契約を締結し、施工を開始します。

実績報告を行う

施工が完了したら、必要書類を準備して実績報告を行います。

実績報告には以下のような書類が必要です。

  • 補助事業実績報告書
  • 補助金交付請求書
  • 施工前後や工事中の写真
  • 施工契約書の写し
  • 施工領収書の写し
  • 振込依頼書

補助金額の確定・交付

実績報告を済ませると、担当機関による審査が実施されます。

審査にパスすると、交付される補助金額が確定され、あらかじめ指定した口座に補助金が入金されます。

葺き替え工事で補助金・助成金を申請するときの注意点

屋根の葺き替え工事で補助金・助成金を申請する際に気を付けたいポイントを3つご紹介します。

申請は施工前に行う

補助金・助成金制度の手続きは制度ごとに異なりますが、多くの場合、施工前の申請が基本となっています。

要件に該当しているケースでも、申請や交付決定通知前に施工を開始、あるいは完了してしまった場合、交付対象外となってしまうおそれがあるので注意しましょう。

なるべく早めに申請する

補助金・助成金制度の多くは募集期間を設けており、期間内に申請を済ませないと補助金を受け取ることができません。募集期間は制度によって大きく異なるので、利用する制度の要綱をよく確認し、期間内に申請するようにしましょう。

なお、ほとんどの制度には予算が設定されており、予算に達した場合は募集期間の終了を待たずに募集を打ち切ってしまうことがあります。

「募集期間に余裕があるから」と申請を後回しにしていると、早期に募集を打ち切られてしまう恐れもあるので、補助金制度の利用を予定している場合は早めに申請することをおすすめします。

必要書類の準備には手間とお金がかかる

申請に必要な書類は、Web上から無料でダウンロードできるものもあれば、然るべき機関で交付してもらわなければならないものもあります。

例えば登記事項証明書は、登記所や法務局証明サービスセンターの窓口か、あるいは郵送で交付してもらう必要があります。郵送手続きの場合、窓口まで出向く手間は省けますが、書類が手元に届くまでに日数がかかるので、急ぎの場合は要注意です。

また、交付書類の中には所定の手数料が必要になる場合があります。多くのものは数百円のコストで済みますが、耐震・耐風診断報告書を必要とする場合は診断費が別途必要です。耐震・耐風診断の費用は数千円~数万円と、比較的負担が大きいので、思わぬ出費に注意が必要になります。

なお、自治体によっては補助金申請に必要な診断の費用も補助・助成してくれるので、合わせて利用を検討してみましょう。

以上が補助金申請で注意したいポイントですが、分からないことや不明な点があれば、制度担当機関や役所に問い合わせるか、補助金に詳しいリフォーム業者に相談することをおすすめします。

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