屋根塗装を行う際、タスペーサーと呼ばれる部品を用いることがあります。タスペーサーの設置は任意ですが、取り付けないとさまざまなリスクが発生するおそれがあるので注意が必要です。今回は屋根塗装で用いられるタスペーサーの役割や単価の相場、タスペーサーを設置しない場合に生じるリスクについて解説します。屋根塗装を行うにあたって、タスペーサーが本当に必要なのかどうか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
目次
屋根塗装で用いられるタスペーサーの役割
屋根塗装に使われるタスペーサーには、主に以下の役割があります。
雨漏りの防止
タスペーサーを使用する目的は、家の雨漏り防止です。スレート屋根は薄い板状の屋根材が重なった状態になっているため、その上から塗装すると塗料が屋根材と屋根材の間に入り込んでしまいます。そのまま塗膜が乾くと、隙間がぴったり埋まってしまい、下地板と屋根材の間に入り込んだ水がうまく排水されなくなってしまいます。下地板の上には防水シートが張られていますが、長時間水にさらされるとシートそのものが劣化し、やがて雨漏りが起こる原因となります。
タスペーサーを設置すれば、屋根材と屋根材の隙間をしっかり確保できるため、雨漏りのリスクを未然に防げます。
屋根の美観の維持
タスペーサーを使わない場合、屋根材の隙間を塞いでいる塗膜をカッターや皮スキと呼ばれる道具を用いて切断する作業が必要になります。これを縁切りと言います。縁切りでも隙間を作ることは可能ですが、鋭い刃物を使用するため、作業中にうっかり屋根材や塗装を傷付けてしまうおそれがあります。また、縁切りは塗料が乾いた頃を見計らって、屋根塗装の1~3日後に行われます。当然、作業は屋根に上がって行われるため、どうしても足跡が付いてしまいがちです。
タスペーサーの場合、下塗りと中塗りの間に設置するため、塗装後に屋根に上がる必要がなく、塗装後の美観を保つことができます。
工期の短縮
従来の方法で縁切りを行う場合、数百枚ある屋根材に対し、手作業で塗膜を切断していかなければなりません。縁切り作業は一般的に2人で行いますが、丸1日ほどの時間を要します。また、縁切り作業は前述のとおり、塗装の約1日~3日後に実施するため、作業時間を含めると塗装後から約2日~4日の時間を要する計算になります。
タスペーサーなら、下塗りと中塗りの間に作業を行うので、塗装後の乾燥を待たずに作業を完了させられます。また、タスペーサーは非常に簡単に設置できるため、一人でも2時間ほどで作業を完了できます。従来の縁切りよりも工期を大幅に短縮できるのもタスペーサーの特徴です。
タスペーサーの単価相場は?
タスペーサーの単価は、1㎡あたり400円~600円がおおよその相場とされています。自宅の屋根塗装でどのくらいの費用が掛かるか計算したい場合は、まず屋根の面積を求める必要があります。屋根面積は、床面積×1.1~1.2で大まかな数値を求めることが可能です。緩勾配の屋根の場合は1.1、急勾配の屋根の場合は1.2で計算します。例えば床面積が60㎡の住宅の場合、緩勾配の屋根なら60㎡×1.1=66㎡、急勾配の屋根なら60㎡×1.2=72㎡となります。
これにタスペーサーの単価を乗じると、緩勾配の屋根なら66㎡×400円~600円=26,400円~39,600円、急勾配の屋根なら72㎡×400円~600円=28,800円~43,200円がタスペーサーに掛かる費用の目安になります。
もちろん、上記の単価相場は目安であり、実際の費用は屋根塗装を依頼した業者によって異なります。また、屋根面積の計算もあくまで大まかな数字となりますので、実際に掛かる費用は増減する可能性があります。より具体的な費用を知りたい場合は、屋根塗装を依頼する業者に問い合わせることをおすすめします。
タスペーサーを設置しないとどうなる?
タスペーサーを使用するか否かは、屋根塗装を行っている業者によって異なります。中には従来の縁切り方法を採用しているところもありますが、タスペーサーを設置しない場合、以下のようなデメリットやリスクが生じる可能性があります。
雨漏りによる建物の劣化
従来の縁切り方法は塗装を終えてから約1日~3日後に作業を開始しますが、塗料の乾き具合はそのときの気候などに左右されるため、場合によっては十分に乾かないことがあります。乾燥が不十分な状態で縁切り作業を行うと、縁切り後に再び塗料が隙間を塞いでしまい、水はけが悪くなる可能性があります。不完全な縁切りに気付かないまま住宅が雨にさらされると、雨漏りが発生し、木造部分が腐食しやすくなります。
腐食だけでも建材はもろくなりますが、湿気の溜まった木材をエサとするシロアリにたかられた場合、さらに骨組み部分の劣化が進んでしまいます。基礎の部分は目に見えないため、劣化しても発覚しにくく、地震で半壊・倒壊して初めて腐食やシロアリに気付いたという事例も少なくないようです。
美観を損ねる可能性がある
従来の方法で縁切りした場合、屋根材や塗膜が傷付いたり、作業時に足跡が付いたりしてしまいがちです。太陽光に当たると、これらの傷や跡は意外と目立ちやすく、屋根の美観を損ねる原因となることもあります。
工期が延びる
従来の縁切り方法は、塗装が乾くまでの時間も含めると2~4日程度を要します。その間、足場はずっと組んだままになるので、洗濯物を干しにくい、家のまわりを移動しにくいなどの問題が生じやすくなります。また、足場は家の2階への侵入を容易にするため、防犯面のリスクが高いと言われています。
タスペーサーを使わないと足場を架けている日数が長くなるぶん、生活面や防犯面でデメリットを感じやすいのがネックです。
コストがかさむ
前回の塗装時に縁切り・タスペーサーの設置が行われていない、もしくは経年変化で屋根材同士がくっついてしまっていると、まず縁切りを行ってからタスペーサーの設置をしなければならない場合があるため、余計なコストがかかることがあります。
以上のデメリットから、縁切りが必要な屋根塗装ではタスペーサーを設置することをおすすめします。
タスペーサーの取り付け方法
屋根の塗装は下塗り・中塗り・上塗りの計3回実施するのが基本ですが、タスペーサーは下塗りを終えた後、中塗りを行う前に取り付けます。業者によっては下塗りの前に挿入するケースもあるようです。下塗り後に行う場合は、塗料が完全に乾いた後に設置していきます。
初めて屋根塗装を行う場合は手作業で挿入しますが、2回目以降は前回の塗装によって屋根材と屋根材の間が密着していることがあるため、皮スキやエスパッターと呼ばれる専用の工具を用いて十分な隙間を確保してからタスペーサーを取り付けていきます。
タスペーサーを設置する位置は、屋根材の幅によって異なります。60cm幅のスレート屋根材を使う場合は、屋根材の片側から15cmほどの位置に取り付けていきます。スリットがあるスレート屋根材の場合は屋根材の片側から10㎝ほどの位置に設置するのが一般的です。一方、90cm幅のスレート屋根材を使う場合は、屋根材の両側から15cmほどの位置に設置していきます。90cm幅の場合はスリットの有無は関係ありません。60cm幅の屋根材への取り付けはシングル工法、90cm幅の屋根材への取り付けはダブル工法と呼ばれています。
タスペーサーが必要な屋根、不要な屋根
タスペーサーは全ての屋根に必要なものではなく、屋根の種類や条件によって要・不要に分かれます。ここではタスペーサーが必要な屋根と、不要な屋根を説明します。
タスペーサーが必要な屋根
タスペーサーが必要となるのは、薄いスレート材を重ね合わせていくスレート屋根です。スレート屋根は他の屋根と比べると屋根材と屋根材の間の隙間が少ないため、塗装すると塗膜で水の逃げ場が塞がれてしまうからです。ただし、同じスレート屋根でも条件によってはタスペーサーが不要なケースもあります。
タスペーサーが不要な屋根
タスペーサーが不要、あるいは使用不可の屋根は以下の通りです。
- 屋根の傾斜が3寸勾配未満
- 屋根材の間に十分な隙間が確保されている
- 陶器やセメントなどの瓦屋根を使用している
- 屋根材に反り、浮きがある
- 既にタスペーサーが設置されている
屋根の傾斜が3寸(約17度)未満の、ほぼ平らに近い緩傾斜の屋根の場合、タスペーサーを入れる余裕がないため、設置することができません。屋根の傾斜が3寸未満の場合はカッターや皮スキなどを使用した従来通りの縁切りが必要になります。
また、スレート屋根でも屋根材の間に十分な隙間がある設計が採用されている場合や、陶器・セメントなどの瓦屋根を使用している場合は、タスペーサーを入れなくてもスムーズに排水できるので、設置不要です。さらに、タスペーサーは一度設置したら取り外す必要はありません。過去に取り付けたタスペーサーをそのまま再利用できるので、経年劣化で破損などした場合を除き、既にタスペーサーが設置されている場合は新たに取り付ける必要はありません。
上記の条件に該当しない場合は基本的にタスペーサーが必要ですが、何らかの理由で屋根材に反りや浮きがある場合、タスペーサーを入れても外れてしまう可能性があります。その場合は、屋根材の浮きや反りをあらかじめ修繕してからタスペーサーを挿入することになります。
生活協同組合ちば住宅コープでは、お客様の屋根の種類や状態を確認した上で、適切な屋根塗装を実施致します。屋根塗装以外にも、外壁塗装や防水工事、リフォームなど、住宅に関するさまざまなサービスを展開しているので、おうちのことでお悩みのことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。